社長ブログ
長野からの来訪②
2024-02-22
情報は大事である。
きのこ業界の情報を集めるために、普段ならお互いに腹を割って話せることもないお互いが、相まみえる場合もなくはない。当社で言えば、ホクト産業である。我々はホクトさんに比べれば、箸にも棒にもかからない存在であることは自覚している。しかし、関連会社のホクト産業は資材関連を販売しているので、我々も消費する立場にあり、お客さんとなり得る。
勿論営業さんは自社の不利になることは公言しないので、聞くこちらが行間を読んで、判断するしかない。こちらも情報を得るためには身を切って,知っている情報を提供して反応を見る。
今回は包装フィルムの業者さんであったが、直接の取引はない。しかし、昔の業界の付き合いで知らないわけではないのでいろいろ話を聞き、また情報の交換の場となった。
きのこ業界は儲かっていない?
長野はきのこのメッカと話した。今もそうであることは間違いないが、フトコロ事情は違うようである。きのこは秋・冬の商材である。秋口になると青果市場の売り子さんも気合いを入れて「きのこ」を販売にかかる。また、売り子さんはそのシーズン前には産地の作付状況を打診するために現地入リをしていたものである。時季になると市場のきのこ単価もぐんぐん上がっていった。春・夏価格が当たり前のように設定され、その差は倍になることもざらであった。よってきのこ屋は夏にトントンの商売をし、冬場で大きく収益を上げていた。夏場が悪くても冬を過ぎると脂肪がたまった。大きい設備投資も、運転資金もその余力で充分返せたし、つくれば売れていた状況で、きのこの産地の設備は変につぎはぎの増設がそれを物語っていた。
今は「作りすぎ」が災いをして、市場も単価をつけられない。なぜなら、自由主義の世の中で、量が増えれば、いき場所のないものは如何に品質がよくても「二束三文」。持ってけ泥棒の世界。その憂き目に直面している。
そこで何が起こるか?脂を少しずつ切り取り、切り売りする。そういう時代が続いて、借り入れが発生する。借りることは商売の鉄則?でもあり、悪いことではない。しかしその時期がかなり早くなってきたということである。
好き好んで自分の首を絞めるのか?
M&Aの話が花盛りであるのは当社だけではなかろうと思う。しょっちゅう電話が掛かってくる。自分の力のなさを探られているような感じがする。勿論自覚はしているが。私財を売っても返せない借金をすることは御法度であることも物の本で理解している。しかし、その手前でも銀行から借入額が多くなると役員とかに銀行からの出向が来るのが通例である。
それも想定内だとしよう。
そこから後の話が食えない。業界の苦しみが理解されない状態になるからである。銀行さん側は設備の稼働状態を100%近くにしないと労働生産性が上がらないと思っている節があるとのこと。付加価値÷総労働時間でだすらしいが、今の業界事情からするとつくらないで、単価を維持することの方が賢明である。大手がマックスで生産することは単価を暴落させ、自殺行為である。よって、市場にきのこが溢れる。昔の儲けられたであろう時季でも脂がつけられない。よって借り入れの時季がどんどん早まる。
この2年間で、きのこ業界の脂は全て吐き出された感がある。電気代の高騰、円安基調によるほぼ輸入に頼っている資材関係の高騰。官製春闘による継続的な人件費のアップ・各種保険関係のアップは企業の負担を増幅する。これらは如何に大手といえども聖域はない。
毎年鳥取県の人口がいなくなるのに
年間50万人相当の人口減が現実的になっているのに、同じように生産を続けることは罪悪である。顔の見える範囲での商売を考えている。とはいっても生産設備が少ないから作ろうとしないだけ、といわれかねないが、持てる企業は今後さらに選択を迫られる立場にあることも事実である。
人手不足倒産はさらに続くと見られている。身に迫るはなしである。