きのこ通信
きのこづくりの極め人 生育編
こんにちは。きのこ応援隊 隊長まえたです。
北村きのこ園のきのこづくりの生産工程とともに、生産に携わるスタッフを各分野ごとにクローズアップし、ご紹介する第6弾。
今回は生育部門を担当する前田美由紀さんにお話を伺いました。
エリンギィはどうやってできるのか??まずは工程からご紹介しましょう。
北村きのこ園のエリンギィは約11の工程を経て市場へ出荷されます。
1 原材料(おがくず、ヌカ、ふすま、水)を混ぜる
2 調整(水分量をみながら撹拌)
3 詰込み(調整した培地を充填)
4 殺菌
5 接種(おがくず菌を加えていく)
6 培養(培養室で約35日ほどかけ菌糸を伸ばしていく)
7 菌かき(菌糸をいくつか取り除き、酸素を与える)
8 芽だし(湿度と室温が徹底されている部屋で成長させる)
9 生育(湿度と温度をかえ、さらに成長させる)
10収穫(選別して、一つ一つ手で収穫する)
11包装(選別し、商品として包装。出荷)
これまで1〜7までの工程の極め人をご紹介しましたが、どの工程もエリンギィ作りには欠かすことのできない重要な作業です。
今回は『芽だし』『生育』についてです。
エリンギィづくりの工程の中で、一番多く人が関わる作業になります。
明るい声で「今日はよろしくお願いします!」と笑顔で出迎えてくださいました。
前田さんは、北村きのこ園の主力がえのき茸を生産している頃から勤務されているスペシャリスト。以前はエリンギィやエノキの包装を担当されていたそうですが、生産部門に移動され、現在は『生育』部門の班長をつとめていらっしゃいます。
前田さんたちのお仕事は、まず午前中エノキの収穫に続き、エリンギィ収穫です。
特に前日が定休日だった場合、エノキもエリンギィも成長が加速するので職員さんは大忙しです。そして、午後からが前田さんたち生育部門の仕事がスタートします。
接種した菌糸を取り除き、菌糸に酸素を与え、そして生殖成長を促していくのが前回紹介した『菌かき』の主な役割です。その菌かきが終わった栽培瓶は、トレーごとローラーで流していき、芽を出すため発芽室で休ませます。
発芽室の温度も大変重要です。
菌かき前の培養室の温度よりも5℃ほど温度を下げることにより、菌糸に刺激を与え生殖成長を促します。湿度もかなり高いので、温かさを感じるほどです。発芽室に入った栽培瓶には、紙をかけていきます。エリンギィの芽が紙につくくらいの大きさになるまで紙は外さずにじっくりと発芽させます。
その期間10日。10日目には紙をとり、次の部屋に移動をさせていきます。
この移動をする瞬間が『生育部門』の腕の見せ所です。
まず、10日間かけて芽がでた栽培瓶を1トレー(栽培瓶12本)ごとローラーへ流し、発芽室から生育室へと移動させていきます。
その移動の間、生育班が芽の大きさをチェックし、成長の遅いものと早いもの入れ替かえながら「芽とり」と呼ばれる作業を行っていきます。成長の遅いものは、発芽室で再び休ませ成長を促します。
この「芽とり」は北村きのこ園のエリンギィづくりには重要な工程で、びっくりエリンギィのようにエリンギィを大きく成長させる為に、栽培瓶1株あたり芽を4〜5本にしていく必要があります。
とにかく量がたくさんなので時間との戦い、手早く作業をする必要があります。
芽とりした栽培瓶は、生育室の棚に並べていきますが、4段ある棚に1トレーずつ積み上げていく作業は非常に力が必要となります。多くの人の力が必要となる工程です。
班長の前田さんは、声かけをしながら指示を出していきます。
「人がたくさん関わるからこそ、連携がとても大切で、そのためには声を掛け合うことが大事だと思うんです。」と。実際に前田さんの仕事の様子を見せていただきましたが、機械音が響く室内での作業なのでしっかり声を出さなければ怪我に繋がるかもしれません。状況を見ながら前田さんは声かけしていきます。
長年勤務されている前田さん。勤務し始めた当初より機械化も進み、生産量も増えてきてると言います。生産量がUPすれば効率よく仕事をする必要があります。
職員同士意見を出し合い、いつしかプロジェクトチームができ、それぞれ問題点を改善しながら仕事に取り組んでいるそうです。
「昔は自分たちで、生育室の棚に栽培瓶のトレーを持ち上げていましたが、今は男性陣がその仕事を請け負ってくれるのでとても助かっています」と微笑みながら話してくださいました。
確かに、一番上の棚は3m近くありトレー自体に重みがあるので、女性の手で持ち上げるには大変です。連携しながらの作業はまさにチームプレー。それを支えるのは、一人一人の思いやりの心でした。
食べることも、料理も好きとおっしゃる前田さんにオススメのエリンギィ料理を伺いました。
水を使用せずエリンギィを醤油・みりん・酒・昆布・砂糖でくつくつと炊き上げ仕上げにゴマを散らすして佃煮にしたり、混ぜご飯に加えたり、豚肉とエリンギィを酢を加えて味付けしたり、食感も良くエリンギィは様々な料理に合うので、ご家庭で楽しんでいただきたいとお話くださいました。
「この仕事が好きです」とニコニコと話してくださった前田さん。
仕事場に立つ前田さんの声は本当によく通っていました。
その弾けるような笑顔と明るい声を聞くと、こちらまで幸せな気持ちになりました。
現場の雰囲気づくりも作業がしやすいようにと班長として心がけていらっしゃるのだと思います。
あったかい気持ちで作られたエリンギィ、ぜひご賞味ください。
次回は、『収穫』についてご紹介します。お楽しみに。
●北村きのこ園では、こだわりをもって「エリンギ」を「エリンギィ」と表記しています。
なぜ、「エリンギィ」なのか、こちらをご覧ください!!
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